2012.05.17
飛行中の雷について
航空機への落雷頻度は、手許に正確な数字は得られませんが、世界中の航空機のことを考えると、毎日どこかで被雷していると思います。
私の30年乗務の中では、5回ぐらいでしょうか。
航空機は、乱気流や雷を受けやすい「積乱雲」キュムロニンバスを縫って航行しています。日本の夏場や東南アジアを飛行された方は、窓外から積乱雲をしばしば見かけられると思います。フライトプランでは、それまでの情報を反映させ、また飛行中にレーダーと目視を併用しつつ、積乱雲を縫うように飛びます。しかし、そちこちに雲が立っているときは、やむを得ず雲の中を飛行せざるを得ない場合もあります。
こうした時に機体に落雷を受けても、「放電する装置」・・・放電索・・stastick
discharger 直径1センチ長さ10センチ~数十センチの棒が各翼(補助翼など)に取り付けられています。 たとえば、ジャンボ機などの大型機では、50本ほど装着されています。また普段機体に生じている静電気をこの棒を通じて空中に放出しています。
落雷を機体(胴体・翼)に受けた場合も、この装置から空中に放電されるようになっています。また、大容量の雷を受けても、計器に支障をきたすような過重な電圧が流れないように「防護機器・・サージ防護機器」も備えています。
2009年、エアフランス機が赤道近くの大西洋上に墜落するという事故がありました。仏政府は、原子力潜水艦まで動員して、海中深くまで調査し、ブラックボックスを回収。主に「速度計の故障」などが直接原因ではないか、という解明をしています。この時の天候は、やはり、厚い積乱雲に囲まれ、激しい乱気流と雷に見舞われたという推測もされています。
今回の大統領フライトは、こうした過去の事例を配慮して、大事を取ったものと推定できます。
日本では、過去大きな雷を受けて、翼にダメッジを受けたことも・・・・2005年JAL機 しかし、乗客乗員怪我なく無事着陸。
2005年のゴールデンウィーク中に、九州の宮崎と鹿児島上空で旅客機2機が落雷にあったという事例もあります。
5月1日の午前8時40分ごろ、福岡から宮崎に向かっていたJAL3623便(MD81)が高度約5,000メートルの上空で右翼に被雷。同機はそのまま飛び続け、定時の午前8時に宮崎空港に到着しました。乗客乗員に被害はなかったものの、翼の表面に約25センチの損傷があったようです。
同じ日の午前11時過ぎ、鹿児島県の東約27キロ、高度約5,000メートルの上空では鹿児島発羽田行きのJAL1864便(ボーイング777)が右側車輪ドア付近に被雷。こちらも乗客乗員にケガはなく、また機体にも損傷は見つかりませんでした。

コメント
フランスの国営テレビニュースで報じられたとき、同時刻を飛行中のJALから捉えた、雷に包まれて光る大統領機が映されました。迫真性のある映像でした。
投稿者: kineko
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