2012.01.15
「安全とサービス」「明るい現場」への回帰を期待する「JAL社長交代」
「風化してはならない!」
1985年の日本航空123便事故機。747SR46 JA8119号機 於日本航空安全研修センターで撮影
「野田政権改造内閣」や「広島刑務所脱走事件」「オウム手配者自首」などのニュースの陰で、「JALの社長交代人事」が発表されました。
「日航生え抜き」ということは、不運にも「御巣鷹山事故」に対面した当時の「高木養根社長」の時代から始まっている。労働組合対策では「分裂労務政策」を押し通したことでつとに有名であるが、「御巣鷹山事故に関連しては、役職を退いて後は、誠意をもった慰霊行脚に努めた」ことでも知られている。
「生え抜き」ということが経営をどう変化させたか、という点で見れば、
「JAL破綻」の蓄積的要因となったのは、「政府が大株主」というくびきが取れた「民営化後」の「NYCのエセックスをはじめとして世界中のJAL寄港地にホテル建設と購入・磐梯のスキー場開発・ハワイ コオリナをはじめとしたアジアでのリゾート開発、子会社孫会社を数百も作り、赤字を垂れ流した放漫経営」や「ドルの185円10年固定の先物買い・最近では西松元社長が主導したケロシン燃料先物買い」という為替ギャンブルだけで、少なくとも4000億円以上という損失を出した経緯がある。
「生え抜き」ということだけで、「良い意味で経営が改革される」という保証はないことを、JALのヒストリーは語っている。
では、「現場出身」ということではどうか。というと
整備部門出身といわれる大西社長となっても、整備の管理部門エリートということはあるものの「安全の観点から現場の意見を大胆に取り入れた」というような兆候は、「殆ど顕れていない」といっても過言ではない。
報道にあるように、大方の航空関係者は、実状を知るだけに「強硬な人員削減と不採算路線のカット」をすれば、当然一時的には、収益は向上する。」という見方をしている。
また、「オリンパス損失隠し」問題では、検察の追及も受け、過去にさかのぼって「役員個人の損害賠償も・・。」ということまで言及されている。この損失額は、せいぜい1000億円程度。JALの場合は、総計2兆3千億円の負債を作り、そのうち少なくとも4000億円以上は、明らかに「放漫経営」ということは判明しているが、誰もその責任をとっていない。
今回の、運航現場の代表として位置つけて「植木社長」就任ということであれば、長年果たせなかった、言葉に踊らない、本物の「安全の日航」を実現していただきたいと期待を寄せるものです。
※ちなみに私は、新社長がまだコーパイロットのころ、確か2度ほどご一緒しました。当時は「片岡千恵蔵さんのご子息」ということで話題でしたので、東映「千恵蔵・歌右衛門」世代として、お話ししたことも記憶しています。誠実なフライト勤務をされていたように思います。
日航、再上場へ経営一新 黒字・再建にめど 社長に植木氏、生え抜き体制へ
2012年1月14日 朝日新聞
経営再建中の日本航空は、新社長にパイロット出身の植木義晴専務執行役員(59)を昇格させる人事を固めた。稲盛和夫会長は名誉会長に退き、大西賢社長は会長につく見通し。黒字の定着で再建
への道筋がついたと判断し、経営体制を一新することにした。
「(2012年は株式の)再上場も控えている。新しい体制について鋭意検討している」。昨年11月、稲盛会長は定例会見で3年の任期を待たず、新体制に移行することを示唆していた。2期連続の営業黒字が確実で、再建に一定のめどがたったとの思いからだ。
日航の経営再建は、企業再生支援機構の出資を受け、京セラ出身の稲盛会長と、日航生え抜きの大西社長の体制で進められてきた。京セラのやり方を持ち込み、各部門ごとに経費の管理を徹底させた。
労働組合との対立を覚悟のうえで、1万人以上を削減し、不採算路線を廃止した。 収益の改善効果は大きく、東日本大震災の影響が出た2012年3月期でも、営業利益は1400億円の見通しとなった。経営再建時に掲げた目標の2倍で、ライバル会社の全日本空輸にも差を付ける。
国交省幹部は「(稲盛さんは)もともと生え抜きに任せるつもりで今秋の株式の再上場をにらんだ人事を進めていた」と明かす。かじ取り役を引きつぐ植木氏は、日航初のパイロット出身社長になる。
稲盛体制下の10年2月に執行役員に抜擢(ばってき)されたばかりだが、「高給取り」と批判されたパイロットのリストラを進めた実績がある。 日航関係者は「旧体制のやり方を引きずる事務職出身者と違って、パイロット出身の植木氏は新体制にふさわしい」と話す。人事は17日の取締役会で正式決定し、はやければ2月にも就任する見通しだ。
ただ、「銀行や国民から巨額の支援を受け、好業績は当たり前だ」(業界関係者)という声もある。路線減少で売上高は減る傾向のため、今後はリストラに頼らない経営が課題になる。(南日慶子)
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植木義晴氏(うえき・よしはる)航空大学校卒、75年日本航空入社。運航乗員訓練企画部長などを
経て、10年12月から専務執行役員。

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