2011.08.23

「乗客から見えないところで、コストカット」といえば・・・「安全」なのです。

すっかり、世の中は、「格安航空・格安運賃」礼賛で染まっています。そもそも、格安航空がアジアで飛躍してきたのは、メインなコストを抑えることができる国状が背景にあります。

第一に、比較にならない「人件費の安さ」・・日本企業が製造拠点を中国・韓国からより人件費の安いベトナム・マレーシアへと移動しつつあることからもうかがえます。

第二に、これまで陸路・特に多くの島が点在するアジアの国々の海路で、不自由な交通輸送に甘んじなければならなかったところに、エアアジアに代表される「格安航空」が爆発的にヒットしてきた経緯があります。

もとはといえば、日本を中心とした大エアラインの退役機材を安く購入し、この事業が始まっています。有名な「エアアジア」とて、わずか9年前の起業です。

大小さまざまな、LCC。「安全への経費をどれだけかけているのか」という点でのその企業の品質さえ、明らかにはされていません。

過去、タイやインドネシアなどでLCCの墜落事故もありましたが、事故調査・原因解明などの情報もないに等しく、どれだけのそれぞれの国での「安全規制」が実体的に有効なのか、不明であります。

航空局の話では、「ICAOに加盟している国は、その国の航空担当省庁の判断に任せるほかに手がない」ということで、

LCCについても通常のエアラインについても、形式的な航空局によるスポットチェックはあっても、日本に飛来した外国機を「日本の安全基準」で厳しく管理するなどということは、不可能です。(EUでは、着陸拒否のエアラインを定めるなど厳しいものもあります)

日本国内においては、食の安全はかなり厳しく管理がこうじられてきました。しかし、「原発事故の安全」では、、役所仕事と癒着の構造が明るみに出てまいりました。

航空においても、抽象的に「格安は良いが、安全には手を抜かないように」などと言っている状態を脱して、厳しい安全度の追及がされなくては、なりません。

メディアも、広告主である大エアラインや、政府国交省に遠慮せず、利用者のための「安全」をあらゆる角度から「具体的に」示してゆく責務があると思えます。

【主張】 格安航空 低料金以外の魅力も競え

        【産経新聞 2011/08/22 大阪朝刊 総合2面 2頁 896字】

 日本の空で、格安航空(LCC)の存在感が急速に増している。全日本空輸に続き、これまで慎重だった日本航空までがLCCへの参入を表明したからだ。

 正規運賃の半額以下の低料金を売り物にするLCC事業の拡大は、利用者には朗報だが、事業者はその分、厳しいコスト競争を迫られる。

 運賃や路線設定を自由化するオープンスカイ政策が世界の潮流となっている中では避けがたい選択ともいえるが、その結果として、安全性が軽視されてならないのは当然である。

利用者の安心感を得ることこそが事業成功の鍵だ。全日空、日航とも、そのことを改めて肝に銘じてほしい。

 日本に就航する海外のLCCは9社21路線で、国際線全体としては3%に過ぎない。だが、この1年で倍増しており、将来の伸びしろは大きいとみられている。

 にもかかわらず、日本の大手航空会社が参入に躊躇(ちゅうちょ)してきたのは、自らが自らの顧客を奪うカニバリズム(共食い)に陥ることを懸念してのことだ。

 しかし、航空機利用の大衆化が進み、かつての手厚い機内サービスなどは利用客の絶対的ニーズではなくなりつつある。とりわけ中短距離路線なら、多少の窮屈を我慢してでも低料金へと旅客が流れるのは当然の理屈だ。

 座席間隔を狭くして乗客数を増やし、食事やドリンクなど機内サービスは有料化する。客室乗務員自ら機内の掃除をするのもLCCでは当たり前だ。あの手この手のコスト削減の努力が低料金を生み出している。

 日本の大手航空にとっては、やや遅きに失した感もあるLCC参入だが、この事業を単なる安売り競争と考えていては、海外勢の後塵(こうじん)を拝すだけに終わる。

 LCCの利用客の半分は、これまで航空機に乗らなかった層といわれる。時代の変化や利用者ニーズを先取りするサービス開拓へと発想を転換する必要がある。

 LCCには、安かろう悪かろうのイメージもつきまとうが、航空事業者として安全運航への厳格な基準が定められていることには変わりがない。整備費用の節減のため、LCCでは機材更新はむしろ大手航空よりも早いという。そうした低料金以外の魅力についても利用客に売り込む工夫と努力が事業者には求められている。

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