2011.08.16

「安全」と「経営」に先行き不安!「LCC」に踊らされているニッポンの空・・・。

~ANAが先行し、JALも慌てて・・・.。~

ANAは、格安運賃競争に、一足早く参戦していましたが、このほど、JALもカンタス航空系のジェットスターと組んで「LCC」参戦を表明しました。

自民党政権時代から引き続き、現民主党政権も、民間航空政策においては、「オープンスカイ=規制緩和」の姿勢を取っており、予定通りの事態となっています。

メディアを含め、「格安運賃礼賛」の方向性で固まっていますが、これで「日本の航空」は健全な発展が図れるのかといえば、不安ばかりが走ります。

「安全さえ、守れれば・・・安いに越したことはない」というのが、すべての消費者利用者の偽らざる気持ちだと思いますが、もう少し深く考えてみる必要があるのではないでしょうか。

例えば、東京/ソウルは、JAL・ANAでは、正規運賃73000円,LCCでは、26000円程度。

~なぜこんなに「値段がちがうのか?~

一般的には、
1.人件費を究極に詰める
2.同じ機体を使って整備費やパイロットの運航効率をあげる
3.あらゆる機内サービスをカットするか、有料化する
4.着陸料の安い空港と時間帯を使う。
5.限定安売りなどをして、メディアに取り上げさせて、宣伝広告費を抑える。

などということことが低価格を生み出す、とされています。

~「安全」と軽く言われておりますが・・・。~

しかし、「運航の安全」については、「メディア」を含めて、「警告らしきものを発する」ばかりで、なにも具体的に追及されてはいないのが現実です。なぜでしょうか・・・。

昨日今日のことではなく、もともと、日本の航空政策が「安全を含めて規制緩和」する方向で流れ続けていることに、大きな原因があると思います。

~外国へ整備を外注してもよい~

例えば、整備は、本来運航する航空会社が行うものでしたが、整備部門を縮小して、子会社に行わせるようになり、更に、孫会社化するという方向です。

更にさらに、現在では、法律的には、「アジアへ丸ごと外注化しても良い」ということになっており、極めて不安定な風にさらされています。JALでは、シンガポールの整備会社に外注したエンジンが左右逆に取り付けられて戻ってきて、そのうえこのことに、半年も気が付かなかったという事態までありました。

~キャリーオーバースタンダード~

航空機のパーツは、自動車が一万であれば、百万のパーツで構成されている、(おおまかですが)と言われているほど、複雑です。

が、簡単に言えば「墜落したり重大な問題に直接結びついていなければ、故障が発見されても修理や交換をその場でしなくても良い。次に基地に帰ってきたときに行う」などの条件を付けた物差しがあります。

これを「キャリーオーバースタンダード」と言い、これも年々甘くなってきているのが現実です。憂うるべきことは、他にも多々ありますが、今日の紙面では、割愛します。
いずれにしても「利用者のためにエアラインの安全チェック」は、関係省庁・メディアの社会的な使命であると思います。

~危ういエアラインの経営~

世の中が「格安運賃」で踊る中で、当のエアライン、特に日本のエアラインの経営は、大丈夫なのでしょうか?

遡れば、「9・11」「鳥インフル」「リーマンショック」などで、航空全体の動きが鈍化し、そのうえ、1978年のアメリカの「航空規制緩和」以来、国際線を持つ大航空会社は、「格安運賃・各種値引き」で収入が落ちて、その上「マイレージ」という見えない負債を日夜増やし続けているのが実状です。

その上、思惑は各エアライン違っても、「B-787」や「エアバス380」などに代表する新型機材を数千億円単位で購入しなければならない、ということにも迫られており、お家の事情は、アップアップであることは、間違いありません。

特に、日本の場合は、アメリカやEU諸国から見れば、「太平洋線(ハワイ・米国西海岸線)」「経済が高揚一途の東アジア・南アジア」への入り口であり、かつ日本人の市場は、よだれがでるところ、アジアから見れば、アメリカ西海岸・東海岸とヨーロッパへの入り口、でもあり、ドル箱路線の山と見えているわけです。

こんなどろどろの国家間の競争があるなかで、日本の政府は、日本のエアラインを守ることに重きを置かないのは、どういうことなのだろうと憂うことあまりあります。

~「安全神話」は、いづれ崩れる~

「人災原発事故」の陰で、超高速で往来する「航空機の安全」は、「格安礼賛」に傾いていますが、一歩立ち止まって原点に回帰すべきではないでしょうか。

「割引の花盛り」の一方で、航空の「正規運賃を正す」ことが、大事です。

日航LCC、来年就航・国内線従来の4割安く

産経新聞 8月16日(火)20時48分配信

 

日本航空と三菱商事、豪州の格安航空会社(LCC)ジェットスター航空を傘下に持つカンタスグループは16日、LCCの新会社を9月に設立すると正式発表した。来年中に運航を始め、運賃は国内線で従来の平均価格より4割安く設定するとしている。2~3年で売上高1千億円を目指すという。

 新会社の名称は「ジェットスター・ジャパン」。出資割合は三菱商事が33・4%、日航、カンタスグループがそれぞれ33・3%とみられる。

 拠点は、発着枠が拡大する成田空港が最有力。国内線は札幌や沖縄などへの路線を検討し、国際線はアジアの主要都市を中心とした短距離路線での就航を計画。新規顧客獲得のため、同一路線であれば原則、他社よりも安い運賃を提供する最低価格保証を適用する。

 海外のLCCが既に続々と就航するなど、日本でもLCCは伸びると期待されている。全日本空輸も平成24年就航予定で参入を決めており、海外勢との間で激しい競争が繰り広げられることになりそうだ。

アクセスランキング、1位はANA/エアアジア、来るか「LCC時代」

日刊 トラべビジョン 2011/7/22(金)

[総評] 今週は、全日空(NH)とエアアジア(AK)が共同で立ち上げる新LCC「エアアジア・ジャパン」の記事が最も多くのアクセスを集めました。やはりというか当然というか、掲載から1日も経たないうちにあっという間に1位になり、注目の高さを改めて実感しています。会見でAK・CEOのトニー・フェルナンデス氏は、「日本にはこれまでローフェアが存在してなかった」と語り、日本市場で「最も安い運賃」を武器として、これまで航空機をあまり利用したことのない人々の需要の掘り起こしに自信を示されました。

 確かに、NH代表取締役社長の伊東信一郎氏とフェルナンデス氏が「既存の半分から3分の1」「タクシー料金より安い」と語る運賃水準が実現した時のことを思うと、思わず衝動的に飛び乗ってしまいそうな気がします。フェルナンデス氏は、「仮に東京/大阪間が3000円だったら、ちょっと食事に行こうと思うはず」といった発言をされていましたが、それも極端な話ではないかもしれません。

 気になるのはNHが別に出資したLCC「ピーチ・アビエーション」との関係で、会見でも質問が集中しました。伊東氏はこれに対して、エアアジア・ジャパンは東京、ピーチは関西とターゲットが異なるため、いかに棲み分けるかといったことは考えていないと話されていました。

 率直な感想としては、そうは言っても東京/大阪間の路線もあり得るわけで、十分な説明ではないように感じましたが、フェルナンデス氏の「日本市場はとにかく大きい。ピーチだろうがアップルだろうが、あるいはプルーンでも、十分に共存できる余地がある」というウィットに富んだ回答が、両社の基本的な考え方を示しているのかもしれません。

 話がそれますが、フェルナンデス氏のウィットには毎度感服させられます。例えばAKのコーポレートカラーが赤であることについて「赤にもいろいろあるが」と前置きし、「我々の赤は楽しく、安く、そして一緒に笑いあっていける赤」「NHの皆さん、これからは赤も好きになってください」と語りかけて笑いを誘いました。

 あるいは別の場面では、会場に来ていたスタッフについて「彼はパイロットだが、事業開発のアルバイトもしている。自分で飛行機を飛ばし、契約を取り付けてくれる。このようにAKは非常に効率が良い」と紹介され、伝えるべきメッセージは明示されつつ、とにかく数分に一度は会場を盛り上げられました。

 以前、AKを紹介するテレビ番組を見た際、社員の皆さんがいきいきとよく笑っていて、従業員満足度(ES)が高い印象を受けました。これは間違いなくフェルナンデス氏の人柄や経営方針によるものでしょう。単なる推測ですが、「お客様に楽しさや喜びを提供するために、まずは社員が人生を楽しめるようにしよう」といったお考えをお持ちなのではないかと思います。

 こうした革新的かつ自由な発想がAKを現在の規模に拡大したことは周知の通りで、エアアジア・ジャパンではこの発想やノウハウ、ブランド力の活用をめざしています。以前の総評で、ピーチは日本人的なサービス精神を発揮しすぎると危険と書きましたが(リンク)、こちらはその心配も少なそうです。

 日本市場ではこれまで、海外LCCの小さな波が押し寄せるのみで、保守的な国民性もあっていわゆるLCCが大きな成功を収めることは難しいように思っていましたが、ピーチやエアアジア・ジャパン、あるいはさらに日本航空(JL)とジェットスター航空(JQ)のLCCまでもが日本の空を飛び始めるとすれば、今後の波は想像以上に高いものにある可能性があります。

 「LCC時代」の幕が開く時に、旅行業界はどうなっているか、旅行会社はどうあるべきか――。難しい問題ですが、今それを考えなくては手遅れになるでしょう。波はすぐそこに迫っています。(松本)

なお、ANAのLCC参入については、2010年9月10日にコメント。http://hideshima-issei.air-nifty.com/blog/2010/09/analcc-f285.html

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» ジェットスタージャパン =JAL(日本航空) LCC参入=
日本の空に星がきらめくジェットスター・ジャパン(Jetstar Japan)日本の翼、日本航空(JAL)がついにLCCに参入することが明確になった。成田空港、関西国際空港を拠点に2012年より、まずは国内線を皮切りに就航する。俄然気になるのは就航する路線。まだ航路ダイヤは確定されていないが、先の会社設立の記者会見では札幌、福岡、沖縄といった行き先が聞かれた。国際線はアジアの主要都市を中心に、日本から4〜5時間程度のフライトで向かうことの出来る都市への就航が予定されている。今回は具体的な就航する都市の...

Tracked : Aug 18, 2011, 1:23:01 AM

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