2011.05.11
福島原発事故から日本は何を学び、何をすべきか?という議論です!
昨日、親しい友人が集まって久し振りの「談論風発」となりました。
どうしても「福島原発事故問題」のテーマは、避けてとおれません。
説得性のあるご意見があり、以下のメモにてご紹介したいと思います。
福島原発事故から日本は何を学び、何をすべきか?(メモ)
2011年4月25日 K・マサヒロ
1、福島原発事故で分かったこと
① 原発は安全ではなかった
② 地震多発国日本における原発の危険性の再認識
③ 事故に対する東京電力の当事者能力の欠如~自衛隊、消防隊、米軍、フランスの力を借りなければ事故への対処ができない~
④ 日本政府の原子力安全規制の欠陥と監視能力、事故対処能力の欠如
l 電源が失われたら終わり
l 津波は想定外?
l 補助電源設備等の設計ミスとその放置
l 電力会社との癒着と情報の隠蔽
⑤ 原発の安全に関するきっちりとしたガバナンス体制は日本になかった
l 事故直後の安全委員会は事故後3月11日、14日、17日に臨時委員会を行っているが、それぞれ5分で終了
l 日本原子力開発機構のホームページを見ても、きっちりとした事故の分析・評価を載せていない~ネット上では、大前研一氏のYouTubeでの解説、早野龍五氏のツイッター、MITのオーメン氏等欧米の研究者のレポート等を見て状況判断をしている人が多かった
l 誰が責任と権限のある立場で事故処理にあたっているのかが全く見えない
⑥ 経済産業省、内閣府、文部科学省への原発関連予算は4556億円~何に使われているのか?
l 2011年度原子力関連予算概算要求額は4556億円で、内訳は経済産業省1898億円、内閣府17億円、文部科学省2571億円
l 国民の血税からこれ程の多額の予算を割いても、今回の事故に対する対処を見る限り、国民への事故の説明、安全性評価、きっちりとした放射能測定、迅速な事故評価、事故処理等が出来ない
l 原子力発電は発電コストが安いと経済産業省と電力会社によって宣伝されているが、そのコスト計算に使用済み核燃料の最終処理までのコストを勘案しているのか? 米国では、他の発電コストとあまり変わらないとの計算結果がある(日本の試算では太陽光発電は原子力の単価の10倍となっていますが、アメリカのの試算では1,5倍から2.5倍で、太陽光発電コストは技術革新で急速に安くなっているのに対し、原子力発電コストは、今回の事故後に安全規制の強化、使用済み燃料コスト、廃炉コストの上昇から、その発電コストは上昇すると見込まれています)
⑦ 原発事故に対する補償制度の欠陥
l 純資産2兆9821億円があっても、有利子負債が7兆4641億円もあり、数兆円規模に膨らむと予想されている福島原発補償費用と事故処理コストが自己資本を大きく毀損し、債務超過の可能性も高くってきたと予想され、避難住民等々への補償をどの様に行うのかといった制度の欠陥が明らかに
l 電力会社が補償しきれない場合の、政府の制度的な補償の枠組みの欠如
⑧ 原子力発電事業は民間が担える事業ではなかった
l 今回の事故で、私企業である電力会社が原子力の大規模事故のリスクは担えないことは明らか
l 福島原発と同様のリスクを抱かえていると思われる中部電力の浜岡原子力発電所を動かし続けている中部電力の経営陣は、そのリスクを過小評価しているのか。或いは、当事者能力を失っているのか。(業界アナリストは、浜岡を止めるコストの上昇を嫌がっているとの説明だが、浜岡から半径30KMの住民に対して、そのような説明で通るとはとても思えない。東海沖地震の30年以内の累積発生確率は87%と試算されているが?)
⑨ 日本の原子力専門家からの原発事故に対する情報発信力の弱さ
l 文部科学省には原子力関連で2571億円の予算がつけられているが、日本の原子力の専門家の分析はあまりにも貧弱で、ネット上では海外の科学者の分析の方が良く見られているのは、何故か?
l 日本原子力開発機構のホームページを見ても、その情報量の少なさから、一般人が見ても事故の専門家の評価や危険性、対処方法等、全く分からない
⑩ 現在の電力供給制度の弊害
l 現在は、各電力会社が送電、配電、発電といった機能を1社で持ち、それぞれの地域で地域独占を許す形で電力供給が行われている。海外では独占力の制限と自由競争による電力供給の効率化と高度化を進めるため、送電、配電を発電から欧米では分離しているが、日本では電力会社の力が強く、一向に電力の自由化が進まなかった。
l 日本の東西を60ヘルツ帯50ヘルツ帯に分けている弊害が今回の事故で大きくクローズアップされた(もし統一されていれば、中部電力の余剰電力を東京電力に回せたはず)
l 私企業の電力会社1社では、原子力発電のリスクとれない
l スマートコミュニティー等の先進的な電力供給体制構築には、送配電の分離が必要
l 電力会社の地域独占を許したが為に、その隠然たる政財官界への影響力から、原子力の安全性に関して神話を生む構造になっていた
l 電力会社の広告宣伝費を原子力の安全に関して使うことの社会的な弊害
l 東電一社が電力供給をになっているので、一社に情報が埋没し、電力需給に関する情報がわからない(送配電が分離されていれば、今回の事故とは関係なかった送電及び配電会社は、情報を出しやすかったのでは?また、発電会社が分離されていれば、それぞれの発電会社の状況は個別で把握できやすい)
l 東電の電力債5兆円には、一般担保がつけられており、今回の事故補償債務に優先してしまうという問題(被災者への補償よりも、事故時の東電の債権者が優先させられるという制度は、倫理的にもおかしい)
l 電力の安定供給の観点から、送配電網の経営から原子力発電のリスクは分離した方が良い
⑪ 電力会社、銀行、政府の癒着
l 住友三井銀行を中心にした銀行団が事故後に2兆円もの融資を行った理由が、説明されていないことの不思議さ(本来であれば、金融債の5兆円よりも劣後すると思われる融資を、銀行が行うことはありえないー株主代表訴訟のリスクはどう考えるのか?)
l 原発事故の補償スキームに関する観測記事が日経新聞で報道されているが、誰がどういう場で作っているのかが分からない(これこそ政治主導で、情報をオープンにして話し合われるべきことなのに、その実態が見えない)
l 現在出ている政府案では、東京電力の送配電及び発電網はそのまま温存される。
l 事故の補償コスト、事故による火力発電比率の上昇コストを、電力使用者への値上げや税金で賄われてしまうのは、電力使用者及び国民感情として納得性がない
l 企業としての東電の事故の責任追及をする前に、現状追認(地域独占体制維持)をする案を出すことの意外性―原発被災者への納得性がない
l 東電の勝俣会長が言うように東電単独ではとても事故補償が出来ないのであれば、チッソ、JAL、りそな銀行の場合のように、経営者の責任追及、役職員のリストラ、資産売却や優良資産と思われる送配電網の分離を行い、事故の責任所在を明確にしてから、それでも税金投入や値上げが必要であれば、新しい制度の元でそれを行うのが筋
l 政府の補償スキーム案への反対意見に関しては、添付資料1を参照してください
⑫ 原発交付金で地元自治体は、麻薬漬け
l 福島第一原発の地元双葉町は、結局町長の給与も払えない程疲弊し、原発2機の増設を申請していた。電源3法による交付金は、当初地元を潤すが徐々に減る仕組みで、結局地元は財政破綻を回避する為に、原発増設に向かう。
l 柏崎刈羽原発の柏崎市も、財政立て直しの為に、震災直後の統一地方選で原発推進派議員が当選し、現行7機の上に更に2機の増設申請に向けて動き出した
⑬ 原発地元を麻薬漬けにすることで、一か所に多くの原発が立ち、オペレーションリスクを増幅
l オペレーションリスクを考えれば、一か所に多くの原発を作るのは、リスクが高すぎる。それは、6機持つ福島原発の今回の事故で明らか。
l 安全は二の次で、経済性重視の姿勢がここでも発揮されている
⑭ 地域独占と総括原価方式の弊害~日本の電気料金は、高すぎる~
l 地域独占で価格競争が起こらない仕組み
l 2009年で、日本17.17円/KWH、韓国6.21円、米国6.7円、中国9.07円(条件的に考えて、韓国との価格差はどう見てもおかしい)
l 韓国との電力料金の価格比が3倍近いのは、自動車業界、電機業界等にとって、国際競争力上非常に不利
⑮ 実は、原子力発電所の発電原価は、16円(16年償却ベース)で安くない
l 原子力発電所の事故への無限責任コストを考えると、コストは3倍に
l 使用済み核燃料は数万年の管理が必要~このコストは?
⑯
2.原発事故コストと電力会社のガバナンス 銀行のガバナンス
1.東電の送配電分離の時
2、今後の原発政策
① 今回の事故の教訓として各原子力発電所の地震リスク、津波リスクの早急な評価をし、新たな原子力安全機関の設置をすべき
l 本来は、原子力委員会、原子力安全委員会、日本原子力研究開発機構等々からレポートが出るべきだが、これまでの経緯を見ると期待できない
l 過去に原子力発電の地震リスクを研究し、発表したというトラックレコードのある日本の原子力関係の研究者を中心に、IAEA、海外の安全委員会、研究者も交えて、新たな原子力安全機関を作って、そこに日本の各原発の安全評価をオープンな形で行ってもらう
l 新たな安全機関は、米国NRCのように国内の原子力発電の安全に対して米国大統領でも手が出せない程の権限を持たせ、特に原子力発電所の半径30KMの住民への安全説明責任、立地県の県知事への説明責任、安全性評価の為の調査員や研究者をその下部組織に組み込む。原子力発電所の操業停止権限も持たせることが必要。新たな安全機関の構成員には、原子力発電所の半径30KM圏内の住民の投票で代表に選ばれた人を構成員に入れるべき。電力会社のOBを構成員としない。原子力推進機関からの天下りも禁止。
② 福島第一と同じ型の古いBWRを即刻閉鎖し、2020年には原子力依存をやめる
l 小名浜 東海 柏崎刈羽 浜岡等を閉鎖
l これで原子力発電依存度 10%強にまで落ちる
l 新設は行わず2020年には、依存度ゼロに
③ 原発事故の補償スキームをオープンな議論をしながら国民納得の上で決める
l 独立した第3者委員会を作り被災者、国民、電力使用者に納得のいくスキームとする
l まず、誰が補償費用を支払うべきかを考えた場合、まずは東電自身、できる限りのリストラや資産売却をした上で、株主、現経営者、及び役職員、東電の債権者(一般担保のついた電力債保有者と無担保の債権者に分けられる)の順で責任を求めていく
l 電力債には一般担保がついている現状では、優良資産である送配電網で電力債の残高の5兆円に見合うように資産分離を行う等も考えられる。 場合によっては、静岡東部や山梨等の送配電網を中部電力に売却も考えられる
④ 原子力発電所の分離と国有化
l これらの補償スキームの帰結を見れば、東京電力以外の電力会社も、原子力発電所の運営にはリスクが高すぎることが明らかとなり、原子力発電所の国有化に向けて動くのではないか
⑤ 各電力会社の送配電設備を分社化し、発電会社と分離し、大きく電力自由化を進める
l 分社化した各地域ごとの送配電会社を資産効率や安定供給の面で競わせるスキームをつくる
⑥ 自然エネルギー発電の強力な推進
⑦ 省エネルギー政策
⑧ 蓄電池付家電製品の普及
添付資料1.
www.isep.or.jp Institute for Sustainable Energy Policies
Address: 4-54-11 Chuo, Nakano, Tokyo Japan /Phone: 03--36382-6061, FAX:03-6382-6062
プレスリリース
報道関係者各位 2011年4月21日
環境エネルギー政策研究所(ISEP)
原発事故賠償スキーム政府原案の問題点
1
東京電力の存続の既成事実化
東京電力の「利益」から賠償資金をねん出するスキームであり、東京電力の再編成(発送
電分離など)は事実上、不可能となる。また、東京電力の資産売却は「利益」減少となる
ため、東京電力のリストラを不徹底とし、賠償金は電気料金へ安易に転嫁される。
2
地域独占体制の存続の既成事実化
東京電力は、地域独占体制を前提としたビジネスモデルで経営されているため、「利益」か
ら賠償資金をねん出するスキームである以上、地域独占体制を変えること(全国一体の送
電会社など)は、不可能となる。
3
金融機関の貸し手責任の免除
金融機関は3月末の2兆円緊急融資も含め、自らの判断で東京電力に融資した。融資の全
額回収は、東京電力の企業組織とビジネスモデルの存続が前提であり、金融機関の貸し手
責任を免除するスキームとなっている。
4
全国民による賠償負担
東京電力以外の電力会社も賠償負担金を支払うスキームは、電気料金を通じて全国民が賠
償資金をねん出することを意味する。各電力会社の企業組織とビジネスモデルの温存(発
送電分離や全国一体の送電会社の阻止)が、負担金支払いの見返りではないか。
5
被害者が人質になっている
福島第一原発事故の被害者にとって、確実に賠償金を受け取るには、「東京電力の存続」と
「東京電力の利益」を求めなければならないスキームである。被害者を「人質」として、
東京電力の企業組織とビジネスモデルを防衛するスキームとなっている。
以上のとおり、東京電力原発事故賠償スキームの政府原案は、東京電力をはじめとする電力業
昨日、親しい友人が集まって、いろいろな話をしました。
どうしても「原発事故問題」の話題は避けて通れません。
政治的には、ここが肝心という時季でもありますので、説得性のある友人のメモを以下に紹介させていただきます。

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