2009.10.11

「タスク フォース」にまかせて、大丈夫だろうか?日本航空再建問題

国内における交通機関の中で、 「航空」はどうあるべきか という座標軸の有無が問われています。98もの地方空港を作り出した「空港整備特別会計略称空整特会」などは、航空関係者の間では10年以上前から大きな批判がありました。

一方で、歴代の日本航空経営陣は、「発着枠などの許認可権」や「安全上の法律的規制緩和」の鍵を握る運輸省/国交省航空局の顔色を伺うばかりで、国内運賃の中の3割にも及ぶ税金の高額さには、文句も言わず、粛々と利用者から受け取った運賃収入の中から、この「空整特会」に資金を流し込んできました。これは、ANAでも同じ問題です。

この特別会計が「需要は、後追いでも」とばかりに「98箇所」もの地方空港を全国につくるという無謀な計画を進行させていても、「抗議や意見」ひとつ上げているのを見聞したことがありません。つまり、放置してきたのです。

そして、日本航空の場合は、「不採算」であることをはじめから承知で、地方空港路線を例外なく受け入れてきたのです。静岡空港の例などをとれば、ANAは、やや違うスタンスであることがわかります。

また、ANAとJALのちがいは、かつての政府の決めた「三社体制」ということで、はじめから「不採算な路線ばかりを飛ぶことを義務づけられていた『JAS』を好んで引き取ったJALと、自らは、「採算性を重視してきた」ANAとの大きな違いがあります。

前原国交大臣が、こうした歴史を逃がさず、調査するという方向性は、これまでの政権ではあり得ない追及です。

しかし、日本航空の赤字の原因を追究するという側面では、大変重要ですが、ひとつの柱ではあるものの、この「空整特会」は、地方空港整備(一県一空港の大号令)予定は、既に終了、つまりあるだけのお金を使い切って「98+茨城空港」を作ってしまったという過去の問題でもあります。残っている問題は、航空会社に対する「公租公課=税金」が高すぎるので「利用者の運賃=基本運賃」が高くなっていることなどがあげられます。

「北九州」「神戸」「静岡」「茨城」がまだ開港に至る前だったと記憶しておりますが、私は、「猪瀬現東京都副知事」とあるテレビ番組でご一緒しました。2005年6月でした。

その頃は、猪瀬氏は、「道路の特別会計改革」の第一人者のようなご発言をされていましたので、 「猪瀬さん、道路ばかりでなく、『空の空整特会』にも言及していただけないでしょうか。」と話しました。

猪瀬氏は、生放送のCMの合間に私を物陰に呼んで「私も、その特別会計については、関心をもっています。必ず、連絡をしますから・・。」と名刺を渡してくれたものです。その後、メールなどを送付しましたが、一顧だにされませんでした。実にいい加減で不誠実なものでした。それはそれとしても、いかに「航空の癒着」が一般的に理解されていなかったかの証明でもあります。同時に、「垣間見ただけでその深さに腰が引ける」問題なのかも知れません。

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さて、国際線については、世界はどういうところにきているか、ということですが、大雑把に言えば、「アメリカ」も「EU」も、世界中に多くのネット網を持つ国家(経済圏)を代表するような国際線航空会社は、国家(経済圏)で庇護し育てる、方向性です。

格安航空は、大別してEUでは、大エアラインの子会社として、「あらゆるサービスを有料化」するなどして、ブランドを明確に変化させています。アメリカでは、ハブ空港から地方空港へと運ぶエアラインの競争が激化していますが、「JetBlue」「SouthWest」などのようにおおむね国内(と言っても日本で言えば国際線並みのフライトですが)では堅調なところも目立ちます。

日本は、「アメリカ・EU・アジアの新興国大国」を利するばかりのような、「アジアゲートウェー政策」や「オープンスカイ政策」も国益を考えて、見つめなおす必要があります。

簡単に述べましたが、「タスクフォースの方々」がそこまでのことを頭に入れ、かつ、日本の経済成長を支えてきた各企業の足となって活躍してきた日本の翼の「経験」を大切にした「再建策」をだせるのだろうか、と今の「日本航空内における挙動だけでは、不安な思い」が致します。

  資産を調べて、切り貼りするだけならば、子供でもできますが、「世界に誇れる日本の航空」を念頭に入れて、「過去の癒着と放漫経営の責任を明確に示し、決着をつけ」今後の「日本の代表航空のあるべき方向を示す」のは、相当な知識と知恵が必要です。

~JALの赤字の原因は、二つに大別~

①経営者の責任というよりも航空政策・航空行政のゆがみに起因している問題と

②「日本航空の歴代経営者の乱脈・不正・癒着から生じた負の遺産を受け継いでいることとその構造にあぐらをかいたままの見通しの甘さを連発している」ことに起因している問題と二つに大別されます。(一部再録)

前者については、

①日本国中に98箇所もの地方空港を延々とつくり続けてきたことによって、採算を度外視して新設の空港に定期便を就航させねばならないという航空局がらみの重い負担です。

②国際線では、運賃の規制がなくなり、格安の航空券が出回り、「ロードファクター(一機あたりの搭乗率)は良くても売り上げても利益が出ないという現実です。特にエコノミークラス主流の路線ではこの影響がもろに表れます。

③一機100億円以上する新機材をボーイング社にしか、発注できない。お家の事情が困っていても、発注キャンセルもできない、という問題です。今回の2000億円必要というのもボーイング787のほぼ20機分です。一方で、ジャンボ機10機を遊ばせておく、というまともな経営なら珍妙な光景ができています。お家のことより、アメリカへの配慮のほうが優先しているというのも変な話です。経済効率が悪いからと言っても、「困っている時に大金をはたく」よりも数年は、堅実な経営が出来るのではないでしょうか。

後者については、

日本航空が民営化される1984年前後から乱脈経営が続き、3000億円以上の損失を蒙りました。これは、経営者と管轄官庁国交省航空局と政治家の癒着、その中にまたがるように経営者と労働組合との癒着(組合幹部は、すべて日本航空本体か子会社の役員になる)という構造が「やりたい放題やれる」環境を育てました。

1.ドル先物予約
  1986年~96年、1ドル185円で固定。損失を重ねたが、更に2017年まで
  これを変更しないために、  「2210億円」
2.ホテル経営
・ニューヨーク「エセックスハウス」・・・・「395億円」
・アトランタ・シカゴはじめ17箇所の日航ホテルはじめ国際国内での開発事業ことごとく失敗
                    ・・・「365億円」
3.ホノルル・コオリナ リゾート開発失敗・・・・「210億円」
主なものだけで総計3000億円以上(3180億円
4.このほか「HSST開発失敗」「貨物専用航空JUSTユニバーサル航空の失敗(1992年に撤退)
  など気の遠くなるような損失を重ねている。

こうした明らかな放漫経営による損失にも、経営者からは誰一人責任を問われることもなく蓋をされて、その後の経営者がそれまで築いてきた資産を毎年売り払うことで誤魔化してきました。

多くの社内からの反対を押し切って建てた「本社ビル」から「健保組合の保養所、テニスコート」「成田の整備や客室乗務員の寮」最近では「JALカード」まで売り払いました。

さきほどお話した、「JAL・JAS」統合などは、まさに経営の大誤算。見かけの所有路線は増えても赤字路線ばかりです(国内幹線はJAL・ANAで、というかつての三社体制を決めた国交省の問題でもありますが)

その上、統合後も老朽化したMD機材はトラブル続出、社内は機材が違うので「整備」も「パイロット」も二本立てで経費ばかりかかり、客室でも国内線しか乗務したことのないJAS乗務員が国際線の責任者になるという珍妙かつ人心が荒れる、要因をつくりだしました。地上総合職でも元JALと元JASはその待遇面での格差に感情的な争いが生じていると言われています。

これは、経営責任以外のなにものでもありませんが、こうした不始末の尻拭いは、国民利用者の前に明らかにしないことがあれば、本当の妥当な再建策などは、生まれるはずもありません。

経営陣は、日本航空に拘わった者としての矜持はないのでしょうか、国のエアラインを代表してきた誇りというものはないのでしょうか。

「タスクフォース」にまずチェックさせることは、ひとつの試みとしては結構ですが、「腐敗・癒着を一掃」しなければ「有識者会議」と大して変わりもないのではないでしょうか。

本当の「日本航空再建」を、新政権並びに担当大臣に強く期待致したいと思います。

ちなみに、映画「沈まぬ太陽」では、「人間の生き方」を主題にしておりますが、こうした腐敗の構造が、きわめてリアルに丁寧に描かれており、観るものに衝撃を与えています。

最近「空整特会」にはようやく触れてきたものの「腐敗・癒着の構造」には、全く触れようとしないメディアも、やがて、動かざるを得なくなるのではないでしょうか。

ロードショー公開10月24日まで、あと2週間。試写会で鑑賞された方々のご感想を伺った段階では、「再建策」への関心がより高まることが予想されます。

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コメント

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投稿者: Rorntync

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