2005.08.04

"ミラクル” フライト!全員脱出!

af20050802
~エアフランスのエアバス340、トロントでオーバーラン事故~

8月2日午後4時すぎ(日本時間五日午前五時)、カナダ・トロントのピアソン国際空港で、エールフランスのエアバスA340が着陸後、滑走路から外れて炎上しました。 エールフランスによると、飛行機はパリ発トロント行き358便。乗客297人、乗員12人の計309人は全員脱出し、うち43人が軽傷を負ったものの、一人の死者もありませんでした。この事故の程度から見て、『奇跡』の生還ともいえる事態でした。画像はhttp://news.yahoo.com/s/cpress/20050802/ca_pr_on_na/plane_crashから。
当時の空港周辺の気象状況といえば、空港の地上部門はすべて行動を停止するほどの激しい「雷雨」に見舞われていました。原因については、調査の結果を待たねばなりませんが、目撃者・乗客などから報告された内容を
照らし合わせますと、

1、天候、特に風(ウインドシア注)の影響で、想定した着地点にタッチできず、停止までの距離に不足した
1.被雷して、機器に何らかの異常をきたした
1.雨の中、「ハイドロプレーニング現象」を起こし、ランウェー上を滑った

などが複合的に重なったことが推測されます。

注)wind shear ウインド・シアとは・・:
 風向風速の突然の変化。低空でウインド・シアに遭遇すると墜落に至ることもある危険な気象現象である。ウインド・シアは温暖な空気の流れが冷たい凪いだ空気の上を通過する時、ふたつの境界にシア・ゾーンが形成される。また、寒冷前線が発生しているような状況ではタービュランスが発生し、渦を巻いている風やウインド・シフトがあらゆる方向で発生している。この種のシアに遭遇すると航空機は上昇降下や進路の変化など不規則な風向風速の影響を受ける。logical_volume_identifier449

    ~機体後部炎上のなかで、よくぞ・・・脱出~

事故原因は、調査を待つにしても、一人の死者もなく全員脱出できたことは、『快挙』といわずにはいられません。その要因はどこにあったのでしょうか。
☆機体がクラッシュしなかった。
ランウェーエンドの左横の窪地に激突し、機体がぐしゃぐしゃにクラッシュすることなく、ほぼ中央から真っ二つに折れました。機体の構造上、翼の横が弱く、この周辺で折れることで、衝撃を吸収したことが幸いしたと思えます。
☆火災のまわりが遅かった
全員脱出まで4~5分ということが報道されています。脱出までに決定的な炎上がなかった、これは当然のことですが、着陸時の事故ですから、翼に搭載されている燃料(ケロシン)も殆ど使い果たし、引火爆発しなかったことも要因といえましょう。

☆更に、脱出へ向けて「客室乗務員」が大きな役割を果たした

パイロットも客室乗務員も、陸上・水上を問わず、日頃からそれぞれの事態を想定した「緊急脱出の訓練」をしています。この事態を見てもわかるとおり、いざという時に乗客を無事に脱出させるには、コックピットが応援に駆けつける余裕もなく、アナウンスも使えなくなった中で、客室乗務員だけでその「ティームワークと的確な判断」で対応しなければなりません。まず、火が出ているとするとどこかを確認し、どのドアを開けて(脱出シュートを膨らませて)脱出させるかを瞬間的に決めねばなりません。全ドアを開ければパニックに陥った乗客はドアを選ぶことなく本能的に飛び出してしまうからです。画像を見ると3箇所のシュートが出されていましたが、報道では4箇所ということです。

300人を3~4箇所のドアからなるべく均等に早く脱出させる任務を負ったのです。悲鳴と怒号が聞こえるようです。訓練では、『脱出』の指示・アラームが鳴ってから、シュートで乗客を脱出させ、風上の地点に避難終結させるまで『90秒』という課題を果たします。しかし、訓練と違って実際の事故では想定されないことも起きているわけですから、『4分』ほどで、乗員・乗務員含め全員の脱出に成功したということは、少なくとも「経験と訓練」の成果が出たということが言えると思います。
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~脱出スライド(シュート)がいざという時に使えなかったら~ 
   
4月に日本国内では「脱出スライドのセットミス」という事件がありました。客室乗務員全員が気がつかず、脱出スライドモードをオフにしたまま、2度にわたり離着陸したというものでした。もしそのときに、今回のオーバーラン事故が起きていたら、乗客を脱出させるのに手間取り、多くの死傷者を出すような結果になったかも知れません。

客室乗務員の「保安要員」としての役割がいかに「乗客のライフラインを握っているか」を物語った事故ともいえるのではないでしょうか。
    (※画像は、TV朝日「報道ステーション」でコメントいたした折のものです。

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» 着陸後オーバーラン、炎上。でも死者・重傷者はゼロ!
航空トラブルが続いている折、しかも日本でも知名度の高いエールフランス(AFR/AF/エアフランス)ということで、ニュースにされたと思うのですが、A340では初めての全損事故では?『カナダ・トロントの空港で旅客機炎上、24人軽傷』 カナダ・トロントのピアソン国際空港で2日午後4時(日本時間3日午前5時)すぎ、パリ発トロント行きエールフランス358便のエアバスA340型機(乗客297人、乗員12人)が着陸後、滑走路を外れ、地面に激突して炎上した。 乗客と乗員は全員が炎上前に脱出したが、24......

Tracked : Aug 4, 2005, 2:03:13 AM

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