2004.09.07

「ファンの声を大事にしたい!」

~プロ野球選手会の「ストも辞さず!」に、「快哉」の共感が拡がるのはなぜでしょう~

航空の現場(労働組合)と航空会社とのあいだで、常に最大の対立点となるのは、「安全問題」です。車の事故より航空の事故のほうがずっと確率は低いんじゃない?とよく言われていますが、堕ちれば100%命はないという点では、較べようがありません。現場は、「自信を持って安全です。」といえる状況をつくるために、日夜努力をしています。特にフライトするクルーにとって見れば「旅客と一緒に死んであげる」ではなく「自分達が危険を感じることは、きっぱり排除することで旅客を守る。」の立場をとっています。
今回のプロ野球合併・リーグ問題は、「一部リストラの心配はあるものの、基本的に、年俸など直接の労働条件で争うのではなく、いわば社会的使命という点での争い」です。思わず、空の問題とも共通点を感じてしまいます。

【体質といわれるが・・。】
そもそも古田選手会長が、近鉄合併問題について選手会の代表として「話し合いをしたい」と伝えた折に、巨人のオーナーでもあり、球界オーナーを代表していると自負している、読売新聞、渡辺恒雄氏は、「無礼な!たかが選手の分際でオーナーと話をしたいとは・・。」と発言しました。同氏はこれまでも、暴言を数多く発していますが、まさに、このひとことは,いくつかの側面で後にどんな弁明をしようと取り返しがつかない言動になったように思えます。それは、
第一に
「選手たちを大切にする気配が全く見えない。」ことです。
もとよりプロ野球にとって、選手たちは「感動や興奮を呼び起こす素晴らしい試合を見せるための当事者たちであり、球界にとっては大切な生きた商品ともいえるはずです。こうした気持ちがあれば、口が裂けても”たかが選手の分際で・・。”など言えるものではありません。
第二に
「ファンを馬鹿にしている、甘く見ている」ことです。
選手にあこがれ、文字通り、選手の一挙手一投足のプレーに注目し、かつ酔いしれているファンにとって、プロ野球全選手を代表する古田氏の穏当な要請を、侮蔑をこめて一蹴する発言は、ファンに向かって挑戦していることにほかなりません。
第三に
「渡辺氏の発言は、球界各オーナーのレベルを表わすものさし」
では、一連の渡辺氏の言動に対して、他の球団オーナー達は、どう反応したのかといいますと
直截に反論する者は誰一人いなかったように見えます。従って、「利益の源泉であるファンや選手を大事にするというよりも、目先のソロバン勘定で動いてゆく体質は皆同じと看做されても
仕方ありません。
第四に
「一般的な経営者としての素養さえ欠けている」
球団に関係する親会社は、いずこもそうそうたる大企業です。企業であれば当然労務対策には、本部や少なくとも部としての組織的配置を行っているのが普通です。労働組合が
あろうがなかろうが、社員全体が何を考えているかを常に把握し、不満があればこれを大きなトラブルに拡大することなく、これに反応しながら企業を運営していくことは、「生産性向上=良質な商品を作り出す」のキーポイントであるからです。更に、大企業であれば、労働組合が結成されているのが普通ですから、下記のようなことは経営者と呼ばれる層は熟知していなければなりません。
さて、まずは憲法で保障されている「労働三権」です。皆さんも中学程度で習った記憶はお持ちと思います。いまさらということもあると思いますが、参考までに・・。
【労働三権】
『本来、人は互いに対等なので、労働者は、労働条件について使用者と対等な立場で交渉して決定できるはずです。  しかし、労働者は、生計を立てるためには、使用者の提示する労働条件が意に沿わないものであったとしても、それを受け入れざるを得ないことが少なくありません。その結果、劣悪な条件で労働者が働かなければならなくなったりします。こうなると、労働者が使用者と実質的に対等であるとはとてもいえません。
 労働者が、人間らしい生活を求めて、そのような労働条件を改善しようとしても、要求する労働者が一人だけであれば、使用者はなかなか耳を傾けないでしょう。けれども、大勢の労働者が団結して要求するのであれば、使用者も無視することはできないでしょう。そればかりか、使用者は労働者の要求をある程度は受け入れざるを得なくなり、その結果、労働条件が改善されることになります。
 そこで、憲法は、労働者が労働条件について使用者と実質的にも対等な立場に立って交渉できるようにするために、労働者にいわゆる労働三権、すなわち、団結権、団体交渉権及びその他の団体行動権(争議権など)を保障したのです(憲法第28条)。そして、これを受けて、労働組合法は労働三権を具体的に保障しています。まず、一人ひとりでは弱い立場の労働者が団結して、労働組合をつくり(団結権)、その団結力を背景に使用者と実質的に対等な立場に立って、労働条件の交渉をすること(団体交渉権)が保障されています。さらに、交渉の過程で、労働組合がその主張を実現するためにストライキなどの正当な争議行為を行うことも認められています(争議権)。このような交渉を経て、労働条件などについて折り合いがついた場合は、それが労働協約として労使双方を拘束することになります。
 また、団結権、団体交渉権及び団体行動権を実質的に担保する制度として、これらの権利の行使に対する使用者の妨害を禁止する不当労働行為制度があります。 』  ということですが、

【労働三法】 をもうひとつわかり易くしますと、

①労働基準法・・・労働条件についての最低基準を定めたものです。この法律を下回る労働条件は無効になり労働基準法の労働条件が適用されます。主に労働契約、賃金、休暇、解雇、安全、女子や年少者について定められています。

②労働組合法・・・労働者と使用者が労働条件について対等の立場で交渉できるようにすることを目的としています。主に労働協約の締結、団体交渉権、労働組合を組織することを定めています。

③労働関係調整法・・・労働争議の予防、解決、労働関係の公正な調整のための法律です。労働争議の調停、仲裁のために労働委員会が斡旋などを行ってくれます。

というものです。

なぜここまでの説明をしてきたのかといいますと、9月7日のオーナー会議後の「コメント」に「ストで減収となった場合、選手会に補償してもらう」など不当労働行為性のある脅しとも取れる発言も報道されました。
「選手会を法律上の労働組合」と認めている現在、下記のようにこの問題は「労働組合法(労組法)で明確に保護されているのは、常識です。従ってこの発言は、『法律を無視した乱暴な脅し』か『よほどモノを知らないか』のどちらかと推定されるからです。
【民事上の免責】(労組法第8条)。
 使用者は、ストライキなどの正当な争議行為によって損害を受けたとしても、労働組合や組合員に対して、不法行為や債務不履行を理由として賠償を請求することはできません

さて、日本のプロ野球にとってアメリカの「メジャーリーグ」はかつて「夢のまた夢」でありましたが、「野茂投手」の先進的活躍を下敷きにして「イチロー、ダブル松井選手をはじめとして多くの日本人選手が活躍」、その模様は衛星放送で手軽に観戦も可能となりました。

日本プロ野球界にとっては、単なるメジャーリーグへの選手補給基地としてしまうのか、メジャーリーグと肩を並べる「魅力あるニッポンリーグ」としてゆくのか、の分かれ道でもあります。
私とて、「野球は巨人、キャラメルは紅梅」で育った世代であり、個人的には「ジャイアンツ ファン」からいつまでも抜けきれない感覚を持っていますが、日本野球の将来を考えると「選手会の行動」を期待を持って見つめてしまいます。

9月6日、「誠意ある話し合いを持たない場合は、スト決行も」の声明が出された夜、民放のスポーツ番組で「選手会ストへの賛否」を聞いていました。電話投票でした。
その結果は、賛成する約17万人、反対する約1万7千人というものでした。10対1です。

球団オーナー、コミッショナーはこの声を真摯に受け止めて、一日も早く選手会と話し合いの場を持つべきではないでしょうか。勿論、誰もが「なるほど・・。」とうなずける「回答」を持参してですが・・・。

以下は、9月7日付 asahi.com の記事です。

プロ野球「土日スト」 選手会が設定、9月の30試合
 合併、1年凍結要求="_"



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コメント

秀島様
お早うございます。 プロ野球界について、現在大きな問題になっている選手会のストライキについて、航空界を参考にしたわかり易い解説と忘れていた憲法28条と労働3法についての解説、非常に参考になりました。 今回の選手会のストライキを決断したことに対して、世の中、いろいろな方がいて、一部の新聞の論調を見ると選手サイドを悪く書いているのが、多く見られます。 一つは、彼らの年俸に対してのやつかみから来ているもの、一つは、経営者側からの息のかかった論調に分けても良いと思います。
もちろん、プロ野球界の将来の発展についてのフアン離れと子供、若者に対しての夢と希望をなくすことになるので、ストはやるべきではないとの声も有るようですが、私は秀島さんの論説に全面的に賛意を表させていただきます。 今のプロ野球界のオーナー会議と言っても真のオーナーは幾人も居りません。 やはり、サラリーマンから読売の頂点に立った渡辺恒男の真のオーナーでないものが、正力オーナーからオーナー職を取り上げて君臨した傲慢さが、あのような発言につながり、形勢が不利になると投げ出して傀儡にオーナー職を渡して、リモートコントールしている様子がその後の発言を見てもありありです。 要は経営者サイドにピジョンが無く、その場しのぎの対応と恫喝するぐらいしか能の無いのが親会社から球団に派遣されて、目先ちょろちょろで動き回っている連中ばかりなので、ストを構えたことに対しても、真剣に話し合いを持たず、秀島さんが冒頭で述べておられる、辺恒の暴言に代表される認識かと思う。 私は西武球団の草創期の代表とダイエーの球団代表を勤めた坂井氏のテレビでの正論に対して、敬意を表したいと思います。 経営サイドにいた坂井さんは、選手サイドに立った大変勇気ある発言をしておりました。しかも、理路整然と経営者サイドの対応を批判しておりました。
とにかく、旧態依然とした体質の元に運営されてきたのが、今のプロ野球界ではないかと思う。 ライブドアの青年社長(東大中退)の買取発言に対しての、近鉄のオーナーと称する物の発言も大変傲慢だった。 俺の知らない物は駄目と来たわけですから・・・何をかいわんやです。 小生の知るところの真のオーナーは西武の堤氏、ロッテの重光氏オリックスの宮口会長、日ハムの大社氏、ダイエーの中内氏等パリーグに多く、セリーグはサラリーマンから頂点に立ったサラリーマン重役が多い。 いずれにしろ、今のプロ野球界には、アメリカの大リーグでも超一流のお墨付きのあるイチロー選手やお客を呼べる松井選手のような人材がいない。 僅かに日ハムの新庄選手のようなショウマンシップの旺盛な選手ぐらいで、非常に少ない、球団は育てるようにしなければならないのにそれらの努力を怠っている。 話がだんだん逸れだして行きましたので、この辺で終わりにしたいと思いますが、プロ野球選手会の古田会長以下一丸となって、古い体質もついでに打破するよう大いに、脅しに屈することなく頑張って欲しい。
秀島さん、大いに正論を張ってください。 世の中、おかし過ぎます。
では、また!

小野寺秀夫拝

投稿者: 小野寺 秀夫

秀島様

拝読させて頂きました。

航空の現場(労働組合)と航空会社とのあいだで、常に最大の対立点となるのは、「安全問題」です。車の事故より航空の事故のほうがずっと確率は低いんじゃない?とよく言われていますが、堕ちれば100%命はないという点では、較べようがありません。現場は、「自信を持って安全です。」といえる状況をつくるために、日夜努力をしています。特にフライトするクルーにとって見れば「旅客と一緒に死んであげる」ではなく「自分達が危険を感じることは、きっぱり排除することで旅客を守る。」の立場をとっています。

==>ここからは、常に切迫した事態を設定しなければなら無い現実の中に、どうしても譲れない真理の存在を実感しました。全くその通りですね。


「ストで減収となった場合、選手会に補償してもらう」など不当労働行為性のある脅しとも取れる発言も報道されました。

==>ご指摘その通りです。「損害賠償」は見当違いです。今日の様に御用組合では考えられ無いでしょうが、かつて労使が厳しく対決した時代では、ストライキを指導した組合委員長等の職場離脱行為等に対する減俸などの処罰はありました。裁判を起こしても勝て無かった様に記憶しています。JALの組合はあの当時はとても強かったですね。


日本プロ野球界にとっては、単なるメジャーリーグへの選手補給基地としてしまうのか、メジャーリーグと肩を並べる「魅力あるニッポンリーグ」としてゆくのか、の分かれ道でもあります。

==>当然後者にしなければなりません。某週刊誌の受け売りですが、リストラする前に、ストライキをする前にもっとする事があるんじゃないの…と思います。

藤木拝

投稿者: 藤木脩

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