1998.11.01

空から降るコラム(2)~『負けず嫌い』~

 くだんの友人は、400名ほどのスチュワーデスを取りまとめ、スキーチームを作っている。会社のスキー部とは別に、いわゆるサークル乗りのようだが、やっていることは本格的。年3回のキャンプが定例で、すべり初めは12月のニセコ。3月は安比か志賀でロングラン。そして1月ないし、2月に行われるエコーバレーでの合宿(4泊5日)が、このキャンプの原点であり、一番の盛り上がりを見せるそうだ。毎年100名近くが参加する。フライトスケジュールの合間を縫って、たくさんのスチュワーデスが集まるのに、外野的興味を引かれ、話を聞いてみた。

 キャンプは、初日のクラス分けで幕を開けます。少人数で目が届くよう、1クラス5名程度で10クラスくらい。午前午後に各2時間のレッスンがあり、その他はフリー。夕食後はミーティング、ビデオチェックがあり、9時頃に解散。4日目はバーンを貸し切りで、大回転のレースを行います。そして、最後はSIAメダル検定と、結構ハードなんです。
 キャンプの参加者は「世界に通用するスキーを身につけよう」という合言葉のもと、元気いっぱい。初日のクラス分けは、これで5日間の運命が決まるとばかりに、全員力が入ります。誰もが少しでも上のクラスに入りたいと、女の意地とプライドが火花を散らします。キャンプスケジュールでは、午後のレッスンは3時半終了。夕食の7時までは、大風呂にゆっくりと浸かって疲れを癒してもらえればと、自由時間にしているのですが、これが意味がない。

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やや硬めで、すべり頃のナイターゲレンデで、昼間教わったことを早く身につけたいとばかりにすべりに励む。なかには恐怖の「もう1本」病の人もちらほら。気づいてみると、ゲレンデはスチュワーデスとスクールのコーチだけの貸し切り状態。
 レッスンを担当するエコーバレープロスキースクールのコーチは、毎年このキャンプを目指して腕を磨いているよう。あるコーチはこう話す。「スチュワーデスの皆さんは、普通の女性とは少し違います。女性は転倒したりすると、起き上がるまでにひと呼吸あったり、照れたりするもの。でも、このキャンプの女性たちは、転んでもすぐ立ち上がり、何事もなかったようにすべり出す。また、あやふやな教え方などしようものなら突っ込まれます。いい意味で張り切らざるを得ない。最後のメダル検定で不合格になり、泣き出す人はザラ。もちろん悔し泣き。でも、たいてい1ヵ月以内にまた来て、シーズン中に合格して帰ります」

 こうした気の強さが機内での非常事態で動転することなく、冷静沈着に対応できる能力につながっているのかと、妙に納得してしまった。
 話は変わるが、「負けず嫌い」で思い出すのは私の友人である岡部哲也氏だ。哲也(以下、敬称略)はワールドカップなど世界の桧舞台で見せていたあの剥き出しのファイティングスピリットとは打って変わって、普段はジェントルで礼儀正しい。
 スキーでは、彼の後ろをすべるだけで光栄という関係だが、ゴルフでは一緒に楽しめる。「よき友と楽しいゴルフを」なんて言いながらスタートするのだが、ラウンドが進むにつれ、燃えてくる。ある時、彼はティーショットを曲げて左のラフに入れた。グリーンまで190ヤードの距離を残し、おまけにグリーン手前は池。慎重にアドレスして、セカンドショットを打った。しかし、惜しいかな、ややショートで池ポチャ。次はワンペナで、池の手前100ヤード地点から打つのが常識だが、彼はもう一度ドロップして、トライ。すると、また池に。私も見かねて、「前から打てば」と声をかけたところ、「納得いかないからもう一度ここから打つ」と言って聞かない。まさにケビン・コスナーの映画『ティンカップ』そのまま。そして3度目にナイスオン。彼はスコアを落とし、私との勝負には負けたものの、その勝負根性をまざまざと見せつけたのである。
 自分に怒りをたたきつけ、あくまで思い描くことへ向かう。その勝負根性があって、初めて日本人として前人未踏のワールドカップ2位などの成績を残したのだと舌を巻いた。
 ゴルフ話ばかりで恐縮だが、ジャンボ尾崎プロには、海外遠征の手配をお手伝いさせていただいていることで、ジャンボ家運輸大臣を自認している。今年のマスターズ出場の時も、成田で見送った。別れ際、「がんばってください」と声をかけた。限りないファンであり、彼のゴルフへの執念と、練習の質と量のすごさを知っている私は、こんなありきたりな言葉しか送れなかった。ジャンボさんは冗談めかして、「タイガー・ウッズと最終日、最終組でまわってくるかな」の言葉を残して飛び立った。
 残念ながら結果は思わしくなかったが、休養後のKBCオーガスタでのぶっちぎり優勝や、サントリーオープン最終日の怒涛の追い上げ5連続バーディは、「ジャンボは負けていない」を内外に示した。海外戦の悔しさを胸に秘め、50歳を超えても燃え続けるそのハートには、ドデカイ負けじ魂が息づいているに違いない。
 瞬間的、負けず嫌いは誰しも、もち合わせていても、これを持続するのはなかなか難しい。どの道でも、一流と言われるようになるには、この「負けず嫌い、負けじ魂」の大きさと有効期限の長さがカギを握っているように思えてならない。
 

文/詩井 入(しい はいる) ・・・スキー関係誌のペンネームで現在の秀島一生です。
イラスト/須藤健一氏

なおこのコラム集は、雑誌「ブルーガイドスキー」にかつて連載されたものを若干の加筆・修正を加えたものです。

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